自己破産の条件とは?
自己破産するには、裁判所から審理を受け、破産手続開始決定がなされる必要があります。
では、裁判所は、どんな場合に破産手続開始決定を出すのでしょうか?
自己破産の条件は、破産法(破産法15条1項)では破産手続開始の原因として、
と定めています。
また、破産法 第16条第1項では、法人の破産手続開始の原因として、
と定めています。
支払不能
すべての債務者(自然人・法人)に共通する破産の条件として、支払不能状態にあることが挙げられます。
支払不能状態になっているとき、破産手続が開始されます。
支払不能というのは、将来にわたって、借金の返済見込みがなくなった状態のことです。
現在収入がなくても、将来の収入見込みも含めて判断する必要があります。
将来、信用や労務を提供することで、収入が得られる見込みがあり、借金の返済見込みが立つのであれば、支払不能とは言えません。
また、現在財産を持っていても、将来、財産を処分したお金だけでは、借金の返済見込みが立たない(困難である)場合には支払不能状態と言えるでしょう。
このように、借金の返済見込みがあるか否かは、その人の財産・収入・信用力などから総合的に判断して決定されます。
一般的には、毎月の収入から生活費を除いたお金で、毎月の借金が返せない場合、支払不能になっていると言って良いでしょう。
債務超過
法人の場合には、支払不能状態に加えて、債務超過であることが条件に加わります。
但し、合名会社と合資会社は例外で、債務超過は原因とはなりません。
債務超過とは、債務者が、債務について、債務者の財産をもって完済することができない状態のことをいいます。
支払不能状態が将来の収入見込みも考慮に入れて判断するのに対して、債務超過の判断基準は、現在の財産のみです。
法人の場合は、破産によって法人自身が消滅してしまうため、現在の財産のみを判断基準にしているのです。
自己破産の条件として考慮すべき事情
自己破産の条件として、破産法で定められた破産手続開始の原因のほかにも、考慮に入れるべき条件があります。
資格職業の制限に該当しない
破産手続きが開始されると、特定の法律で資格や職業制限があります。
該当する資格で仕事をしたり、その職業を営むことができなくなります。
制限を受ける資格・職業の種類は160種以上あり、特定の職業として主なものに、
- 保険外交員
- 証券外務員
- 宅地建物取引士
- 警備員
- 生命保険募集員
- 損害保険代理店
- 人材派遣業
- 税理士
- 公認会計士
などがあります。
また、後見人、遺言執行者などにもなれません。
自己破産で資格制限を受ける職業に就いていて、就業上の支障が考えられる場合は、破産手続きは利用しない方がよいかも知れません。
しかし
一生、その職業や資格に就けなくなるというわけではありません。
制限を受けるのは、破産手続開始決定から免責許可決定を得るまでの間です。
免責許可決定が確定すれば、復権し、資格・職業制限はなくなります。
復権とは
免責許可の決定が確定したときは、当然に復権するとされています。
過去7年以内に免責申立していない
過去に、免責許可決定が確定し、その後7年以内に免責許可の申立があった場合は、免責不許可事由に該当します。
前回の免責から7年経過していない場合、破産手続き開始決定がなされたとしても、原則として、もう一度免責を受けることはできません。
この免責不許可事由については、裁判所が厳格に対処しているとの情報もあります。
過去7年以内に免責申立をしたことがある方は、破産手続きではない他の債務整理方法を選択する方がよいと考えられます。
免責不許可事由に該当しない
「免責許可申立て前7年以内の免責取得」以外にも免責不許可事由はあります。
免責不許可事由に当てはまる行為をしていた場合、免責許可決定が下りない可能性があります。
自己破産を申し立てる主な目的は、免責決定を得て法的に債務の支払義務を免除してもらい、経済的な生活再建を図ることにあります。
そう考えると、免責不許可事由に該当するのであれば、自己破産の申立をする目的が果たされません。
しかし
免責不許可事由に該当する行為があるからといって、免責が受けられないというわけではありません。
該当行為に至った事情が、
- よほど悪質でなく、
- 同情すべき点がある
と考えられる場合には、裁判所の裁量により免責を受けられる(裁量免責の)可能性も残されています。
とはいえ、必ず裁量免責が受けられるというわけでもありませんので、該当行為に至った事情などについて、弁護士等に相談されることをおすすめします。