任意整理のデメリットとは
任意整理手続は裁判所の関与なしに手続きできる債務整理方法です。
そのため、柔軟な対応が可能で、債務者にとって無理のない返済計画を立てることができます。
毎月の返済額を減らすことができるので生活が楽になります。
しかし、その一方で、任意整理にはデメリットもあります。
任意整理手続きによる債務整理をお考えの場合は、前もって、任意整理のデメリットについても知っておきましょう。
必ず和解できるとは限らない
任意整理のデメリットとして第一に懸念されること…
それは、必ず任意整理の和解ができるとは限らないというところです。
任意整理手続は、あくまでも、債権者と債務者の話し合いにより、解決を目指す手続きとなりますので、債務者が提示した弁済案(和解案)に応じない債権者がいる場合には、任意整理による解決はできなくなります。
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債権者が和解に応じてくれない場合は、裁判所による法的な債務整理に移行せざるを得ません。
個人再生手続や自己破産手続がこれに当たります。
強硬な債権者から強制執行の可能性
次に、任意整理のデメリットとして心配されるのが、必ずしも、任意整理に協力的な債権者ばかりではないという点です。
各債権者との交渉の過程で、債務の減額交渉に一切応じようとしない、強硬な態度の債権者も存在します。
このような債権者は、まれに、訴訟を提起してきたり、以前に取得してあった債務名義(公正証書や判決書)などによって、強制執行手続きをしてきたりすることがあります。
そうなると、債務者側としては、また別の対応を強いられることになってしまいます。
そもそも、債務整理をしようとする方は、多重債務の状態に陥っておられる方、いわゆる、多重債務者であることが多いため、任意整理を弁護士等に相談するより前に、すでに、債権者から支払督促手続をはじめとして、貸金返還請求事件などの裁判を起こされていることが少なくありません。
そして、送達された訴状などに対応することなく放置し、欠席判決(原告の主張がみとめられた判決)が出ても、控訴することなく、確定判決となってしまっていることが多いのです。
経済的な再建までに時間がかかる
経済的な再建に時間がかかることも任意整理のデメリットと言えるでしょう。
債権者との合意が成立すると、弁済を開始しますが、原則、3年を目安として、最終的に確定した残債務額を弁済していくことになります。
その意味で、経済的に再建できるまでには、最低でも3年はかかることになります。
その間、弁済原資を確保しながら、弁済を続けていく必要がありますので、生活費の管理を徹底していく覚悟も必要になります。
また、債権者との和解が成立したときに取り交わした合意書(和解書)には、懈怠約款(債務者が支払いを怠った場合の約束ごと)が記載されていることがあります。
2回以上支払いを怠ったときは、期限の利益を失い(残額を一括で請求される)、遅延損害金の支払いをする必要が生じる
という内容の条項が記載されていることが多いですから、支払いを怠ることのないよう弁済を続けなければなりません。
ブラックリストに載る
任意整理を行った事実は、信用情報機関(JICC)に、事故情報として登録されます。
いわゆるブラックリストです。
登録期間は、発生日から5年を超えない期間とされています。
JICC以外の信用情報機関においては、「任意整理」は事故情報として登録されることはないようですが、任意整理手続に入る前に、支払いを延滞したことがある場合には、「延滞」の事実が、事故情報として登録されています。
事故情報が登録されると、新たにクレジットカードを作ったり、借入したりすることはできなくなります。
個人再生より債務の減額幅が小さい
債務の減額幅が小さいことも任意整理のデメリットとしてあげることができます。
例えば、個人再生手続きでは、8割程度の元金カットが認められる場合が多いとされています。
一方、任意整理手続は、取引履歴から利息制限法に引き直した残元金を分割返済していきますが、元金までカットさせるのは困難です。
そのため、任意整理手続は、個人再生よりも債務の弁済額は多くなる可能性が高いとされています。
任意整理には多くのメリットもある
任意整理にはデメリットがありますが、そればかりではありません。
任意整理は、裁判所の関与がなく、債務者と債権者の当事者間の話し合いで和解を目指す手続きです。
だからこそ、任意整理には多くのメリットもあります。
柔軟な返済計画
任意整理は裁判上の手続きではないため、返済額や返済条件などに柔軟な対応をすることができます。
一例ですが、債権者の「もっと返済期間を短縮して欲しい」「一括弁済して欲しい」などの要求に対しては、その代わりに、返済額を更に減額するよう交渉したりすることも可能となります。
また、債務者の返済能力に応じた無理のない返済計画が立てやすいというメリットがあります。
資産の処分が不要
任意整理は、自己破産のように財産を手放す必要がありません。
債務者は資産を保有したまま債務整理をすることができます。
資格制限を受けない
自然人の自己破産では、警備員や生命保険募集人などの特定の職業や資格に就けなくなるという制限があります。
任意整理では、自己破産するときのように、一定の職業における資格制限を受けるというデメリットはありません。
将来の利息をつけない和解
任意整理の和解にあたっては、残元本に、最終取引日から和解成立までの遅延損害金や将来の利息を付けない和解をすることが可能です。
現に、日弁連では、多重債務者に対する任意整理を処理するための全国統一基準を設けており、その中で、弁済案の提示にあたっては残元本のみを対象とし、それまでの遅延損害金や将来利息は付けないこととしています。
弁護士による任意整理では、この基準に従って和解に応じる債権者も多くなっています。
任意整理は債務者自身で交渉できる?
任意整理は、債務者自身で債権者と交渉することが可能な手続きではありますが、弁護士や司法書士が交渉するときと同じような和解ができるとは限りません。
債務者自身は法律知識が乏しいため、自分(債務者自身)に有利な交渉を進めることができない可能性があります。
任意整理は、弁護士や司法書士による交渉により、債務者にとって適正な手続きで和解することが大切です。