クレジットカードショッピング枠現金化の取引勧誘
クレジットカードのショッピング枠現金化とは、本来、商品やサービスの代金を後払いするために設定されているクレジットカードのショッピングの利用可能枠を換金する目的で利用することです。
本来、クレジットカードには、次の2つの機能があります。
- キャッシング機能
- ショッピング機能
この内、商品やサービスを後払いにするショッピング機能の利用枠を換金する目的で利用させようとするのが、ショッピング枠の現金化です。
改正貸金業法が平成22年(2010年)6月に完全施行となり、借り過ぎや貸し過ぎを防止する総量規制が導入されたこともあって、お金を借りづらくなったという声も聞かれます。
総量規制の対象と例外とは?クレジットカードのキャッシングはどうなる
そんな中、一部の悪徳業者が、貸金業者への返済金や、生活費などの資金繰りに困窮している人をターゲットにして、「クレジットカードのショッピング枠を現金化します」という勧誘を行っています。
ショッピング枠現金化の流れ
クレジットカードのショッピング枠現金化は、どこもお金を貸してくれなくなった多重債務者が、当座の資金繰りにも苦慮した結果、利用するケースがほとんどです。
多重債務者がショッピング枠現金化取引を利用してしまうまでの経緯は、次のとおりです。
どこかでお金を工面したい
借金の返済を長い間滞納しているので、どこかでお金を工面できないものかと悩んでいる
ショッピング枠現金化の広告をみつける
インターネットの広告で「DVDを50万円で購入してくれたら40万円をキャッシュバックします」という広告を見つけたので利用してみることにした
40万円のキャッシュバックを受領
広告に掲載されていた通り、DVDとキャッシュバック分の40万円を受け取ることができた
借金の滞納分を支払うことができた
キャッシュバックされた40万円で滞納していた借金の一部を返済することができた
クレジットカード会社から50万円の請求書が届く
クレジットカード会社から、DVDの購入代金として50万円の請求書が届いた
この事例の場合、金額だけで考えると、40万円という大きなキャッシュバックを受け取れたように見えますが、差引10万円も損失を出しています。
キャッシュバックされた40万円は滞納していた借金の返済金として、確かに、一時しのぎにはなりましたが、すでに費消してしまった後です。
結局、この取引で手元に残ったのは、価値のないDVDと50万円の支払義務であり、新たな借金を背負うことになってしまっただけです。
クレジットカードショッピング枠現金化で罪に問われる可能性
クレジットカードのショッピング枠を換金する目的で利用する行為は、クレジットカード会社の「会員規約」に違反する行為です。
そのため、規約違反として、カードの利用停止や強制退会、残金の一括請求などのペナルティを受けることにもなります。
そればかりか、ショッピング枠を現金化した利用者は、被害者ではなく、カード会社を騙した加害者として詐欺罪に問われる可能性さえあります。
更には、悪徳業者に対して、クレジットカード番号や個人情報を提供してしまっていることから、これらの情報を悪用されたり、犯罪や思わぬトラブルに巻き込まれる危険性もあります。
余計なトラブルに巻き込まれないためにも、クレジットカードのショッピング枠現金化行為は、決して行わないようにするしかありません。
クレジットカードショッピング枠現金化は免責不許可の可能性
クレジットカードのショッピング枠現金化行為は、破産法252条1項2号の「不利益な条件で債務を負担したり、信用取引によって商品を購入し著しく不利益な条件で処分した場合」に当たり、免責不許可事由となる可能性があります。
しかし、免責不許可事由に当てはまる行為をした場合であっても、裁判所の裁量により、免責が認められることもあります。
多重債務のため、今後、自己破産の申し立てを検討中の方は、免責不許可事由に当てはまる行為をしていたからといって、自己破産申し立てができないと諦める必要はありませんので、依頼する弁護士に事情を相談してみることをおすすめします。