過払い金の時効を中断する方法
過払い金返還請求権の消滅時効が完成すると、過払い金の返還を求めることができなくなってしまいます。
そうならないためには、過払い金の時効を中断させることが必要です。
過払い金請求の時効は10年です。
過払い金の時効の起算点である「取引終了時」から10年経過する前に、過払い金返還請求権の時効の進行を中断させましょう。
時効が中断すると、今まで経過してきた時間がリセットされます。
時効中断の時から10年先に時効期間を延ばすことができます。
過払い金の時効を中断させる「裁判上の請求」
過払い金の時効を中断させるには、裁判上の請求をするという方法で行います。
裁判上の請求とは、民事訴訟における訴えを提起することです。
訴訟を提起することで、消滅時効は中断します(民法149条)。
時効中断の効果は、訴状を裁判所に提出した時点で生じるとされています。
具体的には、裁判所に、「不当利得返還請求事件」を提起して、過払い金の返還を請求することになります。
ただ、請求すべき金額がわからなければ裁判の起こしようがありません。
裁判をするためには、取り戻すべき「過払い金の額」を把握する必要があります。
そのためには、貸金業者に取引履歴の開示請求をし、引き直し計算をしなければなりません。
貸金業者には、取引履歴を開示する義務があります(最高裁平成17年7月19日判決)ので、取引履歴の入手は容易にすることができます。
しかし、実際に、取引履歴が手元に届くまでに、1ヶ月以上を要したというケースもあります。
また、取引履歴の開示を待っている間(過払い金の調査中)に、時効を迎えてしまったということも、ありえない話ではありません。
すぐに訴えの提起ができなかったり、消滅時効が迫っていると予想される場合には、別の方法で、時効を一時的に中断させることが必要になります。
過払い金の時効を一時的に中断する方法
裁判上の請求を直ちに行えない場合には、過払い金の時効を一時的に中断させる必要があります。
過払い金の時効を一時的に中断させるには、「催告をする」という方法をとります。
催告とは、義務の履行を求める意思の通知をすることです。
時効目前で、訴えの提起が間に合わない場合には、催告しておくことで、一時的に6ヶ月間だけ、時効を延長させることができます(民法153条)。
催告の効果は、意思の通知が相手方に到達した時点で生じます。
催告しただけでは、時効中断の効果が発生することにはなりませんので、催告日から6ヶ月以内に、正式な時効中断の措置(裁判など)をとらなければなりません。
この期間中に、訴えの提起をすれば、消滅時効の中断ができます。
催告は、口頭でも書面でもよいとされていますが、後の裁判で争いとなった場合に、通知内容や到達日を立証できるよう、配達証明付きの内容証明郵便を送付して行うのが通常です。
なお、催告を繰り返して、何度も6ヶ月間の時効延長をすることはできません。