借り過ぎや貸し過ぎを防止するため、改正貸金業法において、貸金業者からの借入残高の上限を制限する「総量規制」が導入されました。
総量規制の導入によって、借入残高が年収の3分の1を超える場合、新規の借り入れができなくなりました。
総量規制はクレジットカードのキャッシングも対象
多重債務者の増加が深刻な社会問題となったことから、これに対処するため、改正貸金業法において、過剰貸し付けの規制を強化するため導入されたのが総量規制です。
総量規制の実施に伴い、貸金業者が、融資申込者の総借入残高を把握することが必要となりました。
そのため、指定信用情報機関制度が創設され、融資申込者の総借入残高を把握できる仕組みが整備されました。
現在、株式会社日本信用情報機構(JICC)と株式会社シー・アイ・シー(CIC)の2社が指定を受けて業務に当たっています。
また、次のような貸し付けをする場合、貸金業者に融資申込者の年収を証明する書類の取得を義務づけることとしました。
- 貸金業者が50万円を超えて貸し付ける場合
- 他の貸金業者が貸し付けている分と合わせて合計100万円を超える貸し付けをする場合
年収を証明する書類の例
源泉徴収票・確定申告書・給与明細書など1年間の収入がわかるもの。
収入のない主婦などの場合は、配偶者の年収を証明する書類や、借り入れに関する配偶者の同意書等が必要とされています。
総量規制の適用
総量規制は、
- 個人の借入
- 貸金業者からの借入
に適用されます。
従って、個人ではない法人名義での借入や、貸金業者ではない銀行や信用金庫からの借入(銀行のカードローンを含む)は対象外ということになります。
クレジットカードのキャッシングは?
クレジットカードでのキャッシングは総量規制の対象となります。
クレジットカード会社は、貸金業法に基づいて、貸金業者として金銭の貸し付けを行っているためです。
クレジットカードでのショッピングは対象外です。年収の3分の1を超える借り入れがあっても、クレジットカードでショッピングすることができます。
総量規制の適用除外
次の貸し付けは、総量規制になじまない貸し付けとされ、総量規制の適用除外となっています。
- 不動産購入のための貸付(住宅ローン)
- 自動車購入時の自動車担保貸付(自動車ローン)
- 高額療養費の貸付
- 資産の裏付けがある貸付(有価証券や不動産を担保とするもの)
- 売却予定の不動産の売却代金により弁済される貸付
総量規制の例外
次のような顧客の利益の保護に支障を生じることがない貸し付けである場合は、年収の3分の1を超える貸し付けであっても、貸金業者から借り入れをすることができます。
- 顧客に一方的に有利となる借り換え
- 借入残高を段階的に減少させる借り換え
- 顧客やその親族などの緊急に必要と認められる医療費を支払うための貸付
- 外国で緊急に必要となった費用など、社会通念上緊急に必要と認められる費用を支払うための貸付(10万円以下の少額・3か月以内の短期の返済であり、使途を確認することができる資料の保存が条件)
- 配偶者とあわせた年収の3分の1以下の貸付(配偶者の同意が必要)
- 個人事業者に対する貸付(事業計画、収支計画、資金計画により、返済能力を超えないと認められる場合)
- 新たに事業を営む個人事業者に対する貸付(要件は6と同様)
- 預金取扱金融機関からの貸し付けを受けるまでの「つなぎ資金」にかかる貸付(貸し付けの実行が確実であることが確認できており、1か月以内の返済である場合)