特定調停手続は、申立費用も低廉で、且つ、比較的容易に、債務者自身で申立をすることができる手続です。
しかし、特定調停を利用しようとするときには、検討するべきいくつかの特定調停のデメリットがあります。
特定調停のデメリット
特定調停のデメリットにはつぎのようなものがあります。
特定調停を利用しようと考えている方は是非知っておきましょう。
特定調停のデメリット
- ブラックリストに載る
- 自分自身で書類を作成しなければならないので時間と労力が必要
- 必要書類の準備・取り寄せに手間がかかる
- 自分自身で裁判所に出頭しなければならない
- 特定調停の中では過払い金の取り戻しは行われない
- 返済額の中に調停成立時までの遅延損害金を付加されることがある
- 調停調書は債務名義であるため返済ができなくなったときは強制執行(給与の差押など)される可能性がある
非協力的な債権者
特定調停は、債権者側の立場からみると、「債務者に破産されるよりもまし」であることから、債権者にとってメリットがある手続であると言えます。
債権者にとってのメリット
- 破産や個人再生よりも多い額を回収できる可能性がある
- 調停調書という債務名義が得られる
- 過払い金を含めた話し合いをしなくて済む
ところが、債権者にとって不利益があると判断されてしまうと、債権者はなかなか和解案に応じてくれません。
債権者によっては、合意に至らないまま、特定調停が不成立となるケースもあります。
- 過払い金が見込める場合に、「債権債務なし」での合意を執拗に迫る
- 将来利息のカットに応じない
など、特定調停に非協力的な債権者の例もあります。
強制執行の可能性
特定調停はほとんどの場合、代理人弁護士を付けずに債務者本人が申立人当事者となって行われます。
交渉力に自信のある人ならよいですが、法律知識の乏しい債務者が、本人にとって不利益のある条件で調停を成立させてしまう恐れもあります。
特定調停では、3年程度の分割弁済を続けていくことが多いので、債務者本人ににとって不利な条件(支払困難な返済総額)で合意してしまうと、調停調書どおりの返済が続けられなくなり、結果、強制執行を受けることにもなりかねません。
任意整理より返済総額が多くなる可能性
特定調停では、将来の利息をつけずに紛争解決を図るのが「通例」となっています。
しかし、特定調停は、裁判所や調停委員会によって運用が異なることがあるため、「通例」とは異なる調停内容となる可能性があります。
特定調停のデメリットである「調停成立時までの遅延損害金を付加される可能性」を合わせて考えると、大幅な債務の減額は期待できません。
特定調停は申立費用は低額で済んでも、弁護士等に代理人を依頼して行う任意整理手続よりも返済総額が多くなる可能性があります。
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特定調停のデメリットとメリットを充分検討する
債務者本人(申立人)が、特定調停を利用するときのメリットとしては、次のようなものがあります。
特定調停のメリット
- 弁護士等に依頼しなくても自分自身でできる
- 申立費用が安い
- 申立後、債権者の取り立てがストップする
- 給料の差押さえなど民事執行が開始されているときは停止の申立ができる
- 利息制限法に引き直し計算されるので債務が減額される
- 将来利息の免除あるいは軽減の可能性がある
- 特定調停は非公開で行われるため秘密が守られる
特定調停は、申立費用も低廉で済み、債務者自身で容易に申立が可能な手続きです。
しかし、その一方で、
- 任意整理手続よりも債権者に支払う弁済総額が多くなる
- 支払を滞ると調停調書と言う債務名義のため強制執行を受ける可能性がある
- 過払い金が見付かっても特定調停手続の場で回収することができない
等、デメリットも多い手続です。
特定調停を弁護士等に依頼することもできますが、それでは、「申立費用が低廉で済む」という特定調停のメリットが生かされません。
それならば、最初から、債務名義の作成されない任意整理で債務整理をした方がよいという選択肢も見えてきます。
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