破産管財事件では、破産者が破産手続開始決定時において有している一切の財産は破産財団とされ、破産管財人によって換価され配当されることになります。
ただし、一切の財産を破産財団とした場合、破産者やその家族の今後の生活や経済的更生に影響を及ぼしかねません。
そのため、自然人の破産においては、破産法上、当然に破産財団に属さない自由財産が定められています。
破産財団とは
自由財産とは
自由財産とは、破産法上、当然に、破産財団に属さない財産のことです。
破産法では、
- 99万円以下の金銭
- 金銭以外に差押が禁止された財産
を、自由財産と定めています。
自由財産とは
自然人の破産において、破産法上、当然に、破産財団に属さない財産。
自由財産となる財産は、以下の通り。
- 99万円以下の金銭
- 民事執行法上の差押禁止動産
- 債務者の生活い欠くことができない衣服、寝具、家具、台所用品、畳、建具
- 債務者等の1か月間の生活に必要な食料、燃料
- 農業、漁業従事者の農機具、漁具等
- 技術者、職人、労務者等の器具等
- 民事執行法上の差押禁止債権
- 給料債権…税金等を控除した手取金額の4分の3相当部分(ただし、手取金額が44万円を超える場合には、33万円が差押え禁止債権)
- 私人から生計を維持するために支給を受ける継続的給付に係る請求権(扶養請求権、生命保険会社との年金契約に基づく継続的給付請求権等)…税金等を控除した手取金額の4分の3相当部分(ただし、手取金額が44万円を超える場合には、33万円が差押禁止債権)
- 退職金債権…税金等を控除した手取金額の4分の3相当部分
- 特別法上の差押禁止債権
- 生活保護受給権
- 各種年金受給権
- 小規模企業共済
- 中小企業退職金共済
- 平成3年3月31日以前に効力が発生している簡易保険契約の保険金又は還付金請求権
など
等
自由財産拡張制度
破産者の経済的な更生のためには、自由財産だけでは充分とは言えないこともあります。
そのため、それ以外の財産についても自由財産として破産者の手元に残すことができる制度があります。
裁判所は、破産管財人の意見も聴いた上で、必要と認めたときは自由財産の範囲を拡張することができます。
これが自由財産拡張制度です。
この制度を利用するには、破産者(破産申立人)が自由財産拡張の申立をする必要があります。
なお、自由財産拡張の運用については、裁判所によって運用基準が異なっていることがありますので、申し立て予定の管轄裁判所で確認してください。
自由財産拡張制度は破産管財人が選任されない同時廃止事件では適用がありません
東京地裁の自由財産拡張基準
東京地裁における自由財産拡張基準では、あらかじめ、次の財産について換価処分が不要とされています。
つまり、自由財産拡張の申立てをすることなく、自由財産として扱われることになります。
- 残高(複数ある場合は合計額)が20万円以下の預貯金
- 見込額(数口ある場合は合計額)が20万円以下の生命保険解約返戻金
- 処分見込額が20万円以下の自動車
- 居住用家屋の敷金債権
- 電話加入権
- 支給見込額の8分の1相当額が20万円以下の退職金債権
- 支給見込額の8分の1相当額が20万円を超える退職金債権の8分の7相当額
- 家財道具
大阪地裁の拡張適格財産
大阪地方裁判所では、以下の財産について、自由財産拡張適格財産とする運用が行われています。
但し、現金及び普通預金と合わせて、合計99万円以下の範囲となります。
- 預貯金・積立金
- 保険解約返戻金
- 自動車
- 敷金・保証金返還請求権
- 退職金債権
- 電話加入権
- 申立時において回収済み、確定判決取得済み又は返還額及び時期において合意済みの過払い金返還請求権
自由財産拡張不相当の判断
裁判所の運用基準や調査する破産管財人の見解によっては、自由財産の拡張が不相当とされることがあります。
拡張が認められない場合とは、例えば、破産者の経済的再生に必要とはいえない場合などで、個々の事案により拡張は認められません。