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引き直し計算をして残元本を算出する

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引き直し計算

引き直し計算をして残元本を算出

引き直し計算とは、利息制限法所定の制限利息を超過する利息の返済額を元本に充当することとして債務残額を再計算することです。

払い過ぎた利息を法定金利(15%~20%)に従って計算し直していきます。

利息制限法の上限金利は、借り入れ元本の額によって、次のように定められています。

  • 元本が10万円未満の場合:年20%
  • 元本が10万円以上100万円未満の場合:18%
  • 元本が100万円以上の場合:年15%

 

引き直し計算に必要な取引履歴

引き直し計算をするには、まず、貸金業者(債権者側)に対して、取引履歴の開示を請求する必要があります。

最高裁判所平成17年7月19日判決で、「取引履歴を開示することは貸金業者の義務である」との判断が下されたため、開示を拒む貸金業者は、今ではほとんどいなくなりました。

同判決では、「貸金業者が取引履歴の開示を拒んだときは不法行為となる」とも判断されたため、もしも、取引履歴の開示を拒む貸金業者がいた場合には、当該貸金業者に対して、損害賠償を請求することができます。

取引履歴の開示請求とそれに応じない貸金業者への対応

貸金業者が開示すべき取引履歴の範囲は、

業者が既に消去などして現実に存在しないデータを除き、保存しているデータの全て(保存期間経過後のデータを含む)

となります。

従って、債務者側としては、過去に完済した取引を含めて、初回契約の取引からのすべての取引履歴の開示を求めていくことになります。

貸金業施行規則第17条では、貸金業者の帳簿保存期間を10年間としていることから、それを根拠として、

10年以上前の取引履歴は保存期間経過のため廃棄済みだ

などと言って、一部しか開示してこない業者が、稀にではありますが存在します。

取引履歴の一部しか開示しない業者がいる場合の対応としては、債務者側で保存している「契約書」や「領収書」などの資料、債務者自身の記憶等に基づいて、取引を推定して計算することも行われています。

金銭消費貸借契約書やキャッシングカード、領収書など、証拠となるようなものが手元に残っていない場合の対応については、過払い金請求に関連するよくある質問と答えをご覧下さい。

引き直し計算の方法

引き直し計算

引き直し計算をしてみよう

引き直し計算の基本の計算式は、つぎの通りとなります。

基本の計算式

[元本+(元本×制限利率÷365×日数)]-返済額=残元本

*端数は切り捨てます

例えば、100,000円を年率18%で借り、30日ごとに10,000円ずつ返済していく約定を結んた場合、

初回支払後の残元本は、下記計算式の通りです。

100,000+(100,000×0.18÷365×30)-10,000=91,479

元本10万円を年利18%で30日間借りた場合の利息計算は、

100,000円×0.18÷365日×30日=1,479円

となります。

返済金額10,000円から利息1,479円を差し引いた8,521円を元本に充当しますので、1回目の支払後の残元本は91,479円です。

支払回数2回目は、下記計算式の通りです。

91,479+(91,479×0.18÷365×30)-10,000=82,832

初回の支払後、元本が10万円以下になっていますが、利率は変更せずに計算します。
詳細は引き直し計算の留意点をご覧下さい

支払回数2回目の利息は、91,479円×0.18÷365日×30日=1,353円

返済額10,000円-1,353円=8,647円(充当額)

よって、2回目の支払いが終わった後の残元本は、91,479円-8,647円=82,832円となります。

この例題の場合、支払回数11回目に9,018円を支払って完済となります。

計算書
回数 借入額 日数 年率 支払額 内訳 残元本
元本 利息
100,000 100,000
1 30 18 10,000 8,521 1,479 91,479
2 30 18 10,000 8,647 1,353 82,832
3 30 18 10,000 8,775 1,225 74,057
4 30 18 10,000 8,905 1,095 65,152
5 30 18 10,000 9,037 963 56,115
6 30 18 10,000 9,170 830 46,945
7 30 18 10,000 9,306 694 37,639
8 30 18 10,000 9,444 556 28,195
9 30 18 10,000 9,583 417 18,612
10 30 18 10,000 9,725 275 8,887
11 30 18 9,018 8,887 131 0
109,018 100,000 9,018

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引き直し計算の留意点

引き直し計算

引き直し計算の留意点を知っておきましょう

引き直し計算をする上で、つぎのような留意点があります。

適用利率について

継続的に、借りたり返したりを繰り返して取引を続けている場合、残元本の額は変動していきますが、途中、返済によって残元本の額が減った場合でも、適用利率は変更しません(最高裁判所平成22年4月20日判決)。

逆に、残元本の額が増えた場合には、適用利率は下方修正されます。

つまり、元本の額が増えた場合に制限利率が下方修正されることはあっても、元本の額が減った場合には制限利率が上方修正されることはありません。

ポイント


例えば、当初、5万円を借りた(このとき利率は利息制限法により20%)が、継続的な取引の途中、残元本が10万円以上になったとき、利率は18%に変更になる。
その後、返済を続けて残元本が10万円未満になっても、利率は20%にはならず18%のままで計算する。

返済期限に遅れた場合

返済期限に遅れた場合でも、その後、貸金業者から「期限の利益喪失の通知」や「一括弁済の要求」などがなく取引が続いている場合は、遅延損害金は発生せず、利息制限法所定の利率で計算します(東京高等裁判所平成13年1月25日判決)。

過払い金に付する利息

引き直し計算の結果、過払い金が発生した場合には、貸金業者(債権者)へ返還請求する際、過払い金に付加する利息の利率は5%とします(最高裁判所平成19年2月13日判決)。

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